茨城県 アステラス製薬(株) つくば研究センター


アステラス製薬(株) つくば研究センター(御幸が丘)

つくば市にあるアステラス研究所では、16人の知的発達障害者を雇用している。2015年10月7日、室長である和栗氏を訪ねお話しを伺った。

 広大な敷地に建つアステラス製薬(株)のつくば研究センターは、主に新薬の開発を行っている。研究者のエリートが集まる場所だ。まず入口を入るときれいに整理された花壇が目に飛び込んできた。知的発達障害のある16人がチームを組んで、鉢植えから育て、水やり、整備を毎日行っている。それだけではなく排水溝の落ち葉掃除も丁寧に行っている。


敷地内にある大きな温室で育てられている葉牡丹や日日草やトウガラシは整備されて研究所内や玄関、道路脇、シャトルバスのバス停に飾られている。
和栗氏は言う。「障碍者は連続した作業が得意で持続力があるというけれど、
一日中同じ仕事をやっていたら誰だって飽きてしまう。様々な仕事をしてもらって環境に慣れ、時間や規律を守ることを教え、モチベーションをあげているのです。定時に帰ろうとすると、最後まで終わらせるまで帰れないよ、と教育しています」。自閉症の場合、時間通りにならないことや、突発的なことが起きるとパニックになると言われているが、時間をかければ対応できるようになる。

文書をシュレッダーにかけ再生するための機械。彼らは非常に礼儀正しく、わたしの方を向いて笑顔で【こんにちわ】とあいさつをしてくれる。機械の前には、「うんてん」「かみよし」とかかれた大きなスクリーンがある。不具合が起きると赤く点滅する。部屋に入ると全員が一瞬仕事を中断して「こんにちわ」とあいさつして頭を下げる。礼儀を重んじる和栗室長の熱意は彼らに浸透している。そこには障碍者も健常者も、なんの垣根もない。日本人が大切にしている礼節がここにはある。

製薬会社なので発泡スチロールが大量に出るのだが、これを特殊な機械ニ入れて再生可能にする作業も行っている。熱くなった再生物を取り出す時以外は、彼らだけで作業するそうだ。「彼らに常に興味を持たせたり、できたことの成果をしっかり評価しているんです。」と和栗室長は語る。ここでは障碍者とか健常者という「障壁」が本当に低い。ここで働く彼らは、ただ単に仕事を与えられているのではない。日々成長し、進化し続けているのだ。

アステラス製薬が開発した免疫抑制剤タクロリムスは、臓器移植や骨髄移植を行った患者の拒絶反応を抑制する薬剤。アトピー性皮膚炎に対する塗布剤、関節リウマチ治療薬としても用いられている。この薬は筑波山の土壌細菌(ストレプトマイセス・ツクバエンシス)から作られているという。さて、本研究センターの敷地には大きなどんぐりの木がある。彼らは筑波山の土壌にある微生物の恩恵に感謝して、どんぐりの実を拾い、苗木にまで育てている。社員は年に一度、筑波山にその名駅を植樹している。和栗室長は、障碍者雇用だけでなく、環境再生と人への思いやりを喚起させる理想的な流れを実現している。

研究所内で、同じバックを持っている人をみかけた。会社のグッズかな・・と思っていたら、使いまわしの再生文房具を一定以上使ったらこういったグリーンサプライグッズがもらえる仕組みになっているという。もちろん、これらのグッズも彼らが制作しているのだ。「和栗さん、どこまで彼らの仕事が広がっていくんでしょうか」と問うと、和栗さんは穏やかな声でこう答えた。「わたしはね、もっと仕事を増やしていこうと思っているんですよ。彼らには可能性がある。そしていつも研究で心身が疲弊しているエリートたちに、彼らも頑張っているんだから俺もがんばろうという気持ちになってもらいたいんだ。」