福井県障がい児者及び親の会連絡会 1998年

第2回総会 大野市文化会館
「聞かせて兄弟姉妹の胸の内」 講演内容 1998年11月22日(日)

障害児者の兄弟姉妹ネットワークを発足したきっかけと経緯
30歳になるまでは、私は兄や両親に背を向けていました。兄についても無関心で家族から離れたいと思いながら生活をしてきました。しかしあるきっかけからきょうだい同士のコミュニケーションを図りたいと思うようになり、この活動を始めたのです。
1996年10年 ウェブサイトを開設 きっかけは、JDSNのホームページを雑誌で見たことでした
1997年    全国組織の兄弟姉妹の会に入会 → 期待していたダウン症のきょうだいとは巡り合えなかった。
1997年    反応が親からのみ・きょうだいから批判的なメールをもらう
1997年    障害者のきょうだいが急増→ネット検索にHPを登録したおかげ(?)
1998年1月15日 健常者のきょうだいだけが限定して参加できるメーリングリストを開始する
1999年     メーリングリストを休止。2000年は1年間活動休止。

2001年01月 活動を再開したが、翌年から父の癌闘病、看取り、母の在宅介護、兄の世話のため活動休止

2013年11月 活動を再開する


「きょうだい」という関係についての私見
よく「健常者のきょうだい」をどのように育てればいいでしょうか?と親御さんから質問をされるのですが、私が活動している内容は「障害児・者のきょうだい」同士でコミュニケーションを図ることであって子育て論ではないので、大変困る質問です。そこで、そもそも「きょうだい」とは家族の中でどのような存在であるのかということについて考えてみました。

ここで、まず皆さん(主にご両親に対して)にご自分の「きょうだい」を思い浮かべてみていただきたいと思います。「きょうだい」とは、付かず離れずの関係で、喧嘩や行き違いがあっても割合と修正がききやすいですよね。そしてまた、年月とともに家族から離れてお互いに独立してゆきます。有事の時には助け合える存在でもありますね。

障害者のきょうだいも、生まれてすぐに、あるいは幼い時から「
障害者」を意識しているわけではないので全く普通の「きょうだい関係」であると認識しているのですが、年齢を重ねるうちに、「障害者のきょうだい」であるがゆえに抱える特殊な点がでてくるのです。それは、「障害児・者のきょうだい」は、いずれは親代わりもしくは後見人となる時がやってくる喧嘩をすることに罪悪感をもってしまうこともある(もたない場合もあります)家族離れをする時期に親から失望されたり過度の期待に苦しむ場合もある。自己啓発の段階で障害を持つきょうだいの存在がどこかに常にあり、将来進む道を決める場合に悩む。悩まず自分のすすみたい道を選ぶ場合、そこに家族との溝が生じる場合もある。自分だけ好きな事をしていることへの後ろめたさと同時に自分が好きな事をしたい欲求がある。

障害者のきょうだいをもって得たものと、相反するマイナス的な感情を同時に持ち得る傾向がある。
弱者へのおもいやり・やさしさ → 人の言動に敏感・傷つきやすい
いい子であること・優等生である → 我慢・親の愛情を得るためのアプローチ
こういったマイナス的感情は、
きょうだい自身も幼い場合・年齢が若い場合には気がついていません。成人してゆく段階で、少しずつ気がついてゆきます。過去を振り返って「あんな時こうしてくれれば、こんな人がいてくれたなら・・」と思い返す事が多いようです。
それはなぜでしょうか?それは、この隠れたマイナス感情に気がつく機会が無い、本人が自覚していないからです。そこで、幼少期からの精神的・心理的サポートをすすめてゆくことは今後必要であると思います。


きょうだいの感じ方の違い
同じ「きょうだい」でも、ふたりきょうだいか、3人以上のきょうだいかによって感じ方が異なります。健常者同士で助け合える場合と、片方だけが世話役になる場合があります。自分が兄・姉であれば世話をしてあげようという気持ちになり、弟・妹であれば立場が逆転することもあります。

親ときょうだいの立場の違い
親は子供の療育が中心で、同じ立場の人同士で集まる場があります。きょうだいは、自分自身の生活と障害者であるきょうだいの生活との間のギャップをどう埋めながら共存してゆけばいいのかということを考えなければならなくなります。しかし定期的に親の会のように集まったり福祉活動にばかり時間を使うことができない人たちもいます。なぜなら、そこには学校生活・社会生活・恋愛・結婚・自分が築く家庭など「個人の生活」があるからです。

家族としての共同体意識を高める必要性

これも私見ではありますが、父親不在の家庭ほど「きょうだい」に課せられる負担は増えているのではないだだろうかと思うときがあります。父親が障害を受容しきれていないことも問題のひとつです。それによる夫婦仲の不和・崩壊、母親の孤立などが「きょうだい」に大きく影響してきます。母親は母性としての守り・保護・やさしさを教え、父親は父性として、立ち向かう強さ・競争心・挑戦意欲などを教えてくれる存在であるのですがこの一方でも欠ければその「しわ寄せ」が健常者のきょうだいに向かってくることになります。これは、障害者がいないごく普通の一般家庭でもいえることでしょう。難しいのは、障害者のきょうだいは特別な存在であると同時に、問題視されるほど特別ではないという常に矛盾した両面を有していることなのです。健常者の「きょうだい」の中でも、家庭環境がうまくいっているケースはたくさんあり、父親との対話のある家庭ではこのような「しわ寄せ」が健常者の子供に向けられることもないようでうす。これは私見ですが、父親の精神的な障害者に対する受容がなければ、母親の期待や不満をぶつける相手が健常者の子供にふりかかってくることになることが比較的に多いということがいえるでしょう。親の会や地域活動に参加する父親の存在は貴重なもので。しかし、そこに参加してこない父親たちに対する精神的なケアは一体誰がしてくれるのでしょうか?

専門家による現状の「健常者のきょうだい」研究について
新聞や論文では、アンケート調査などで「健常者のきょうだい」の
性格付けをするにとどまっています。研究そのものは否定はしませんし、施策を考える上でのアプローチとしては認めるべきものであるのですが、その研究結果で出てきた様々な実態に対する支援体制を整えることが大事であると思います。また、発表されている数量的な結果はあくまでも成長の段階のある一時的な感情でもあるので、年齢と共に「健常者のきょうだい」が持つ悩みや不安は変化してゆくということを認識してほしいですし、途中で得た回答だけで定義付けてしまうことに物足りなさを感じます。結果を考察し、幼少期・思春期・成人期にはどういう対処のしかたがあるのかということを系統立てて考えていただきたいと強く要望します。

今後必要なアプローチ
幼少期の支援 : ケースワーカーやソーチャルワーカーの育成。専門的知識が必要。
成人期の支援 : 「きょうだい支援の会」の成熟化、高齢化に向けた医療体制や情報収集。

幼少期の支援とは、具体的にはゲームなどを取り入れながら自然に障害について学ぶ場を提供してゆくこと、学校や親には言えない悩みなども自然に話せる場を作る事です。これには心理学者や医師などの専門家の協力が必要になります。対して成人期の支援には、専門家の参加は講演を聞いたり情報を得るにとどまる間接的なものにしておいたほうがいいでしょう。成人してからは研究対象とされることに不快感を感じることもしばしばあるからです。私が活動している「兄弟姉妹のネットワーク」では、この成人期の支援を充実させる事が第一の目的です。

 

「きょうだいML」を通して認識したインターネットという手段が持つ長所と短所
長所
同じ立場の「きょうだい」と知り合うことができた
好きなときに好きなだけアクセスできる(時間の節約と大勢とのコミュニケーション)
誰にも言えなかった本音を素直に出せる(安心感)
他の障害についての知識や法律・映画の話題・本の話題など、話題が豊富
全国に仲間がいる連帯感


短所
文章によって誤解が生じる
相対ではなく複数のやりとりで話題が散漫になる、話題の回転が早い
読み手と書き手の間にタイムラグが生じる
問いかけへの返事がない不安感
文章にしてしまっているので取り消せない不安感(感情は時と共に変るから)
集まる機会がない


今後の課題と方向性
地域ごとに「きょうだい会」が増える啓発運動、きっかけとなってゆきたい
オフ会が必要(地域ごとでもいいが、主催者が必要になってくる)
管理者のフォロー
MLで出た話題をHPにフィードバックしてゆく
成人したダウン症への医療や高齢化問題についての調査
アメリカにある大人のきょうだいネットワークとの交流(主にニューヨークにあるAHRCなど)
アメリカ(シアトル・ニューヨーク)で実践されているSibshopの紹介

 

1年を通してできたこと、できなかったこと
出来た事 : 仲間が増えた・障害別のドアをHPに開設・情報の細分化
出来なかった事: 全体集会、フォロー不足(時間的余裕がなかった)


困っていること
仕事に追われ時間が充分にとれない、集中できない(情報を集めることができない)
親の高齢化に伴い、入院や病気が増える。→ 自分の時間が少なくなる。
自己の健康管理が不安

今後の課題と基本的なスタンス
●地域ごとに「きょうだい会」増える運動のきっかけとなっているので、もっと増えてほしい。
●オフ会が必要(実際に会って話したい)
●管理者のフォローの充実を心がける。
●MLで出た話題をHPにフィードバックしてゆく
●医療や高齢化問題についての調査をしてゆきたい
●アメリカの大人のきょうだいネットワーク(Sibnet)との交流を深めたい
●アメリカで実践されているShibshopと似た取り組みが日本にあるのかを調査したい
基本的なスタンスとしては、健常者のきょうだい全員が積極的に障害者問題に関わる必要はないと思っています。若いときほど、今の自分が幸せになるkとおを第一に考えるべきで、今は出来なくても将来考える時期がやってきたときのために情報にふれていたいというだけでも充分です。MLはあくまでも自主性を重んじて展開してゆくつもりです。


このあと、分科会として母親・父親・きょうだいがそれぞれの部屋に分かれて2時間あまりの交流会を開くという大変貴重な時間を持つ事が出来ました。この企画に際しては、ダウン症児親の会「すくすくの会」の橋本あゆみさんら、その他大勢の方々に感謝いたします。きょうだいの部屋では、小学生、高校生、社会人、主婦3世代にわたる広い交流をもてたことがとても嬉しいことでした。みな障害の種類は異なっていましたが次第にうちとけあい、きょうだいを思う気持ちが共通していることを再認識しました。